現代訳一覧

現代訳一覧 (和歌番号1~25)

ここでは、百人一首の和歌の現代訳を一覧にして紹介しています。
但し、百首を一度に紹介するとかなり長くなってしまうので、このページでは和歌番号1~25のものを一覧にしています。

初めにあるのが百人一首の和歌番号で、その後にあるのは作者名です。
原文と、その下の括弧内には原文の読みを載せています。
現代訳は意味を分かりやすくする為に、原文の趣などを崩さない限りで、ある程度の意訳をして紹介しています。
また、現代訳を読むと大体の意味や感じなどはつかめると思いますが、それぞれの和歌が詠まれた背景などもあるので、よければ各詳細ページも覗いてみてください。

また、和歌番号を選択すると、それぞれのページが表示されますが、ここで紹介している以外の和歌は、下の和歌番号から調べてみてください。


和歌番号 26~50
和歌番号 51~75
和歌番号 76~100


001 天智天皇 
原文
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
(あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ)
現代訳
秋の田の側につくった仮小屋に泊まってみると、屋根をふいた苫の目があらいので、その隙間から忍びこむ冷たい夜露が、私の着物の袖をすっかりと濡らしてしまっているなぁ。

002 持統天皇
原文
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
(はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま)
現代訳
もう春は過ぎ去り、いつのまにか夏が来てしまったようですね。香具山には、あんなにたくさんのまっ白な着物が干されているのですから。

003 柿本人麻呂
原文
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
(あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ)
現代訳
夜になると、雄と雌が離れて寝るという山鳥だが、その山鳥の長く垂れ下がった尾のように、こんなにも長い長い夜を、私もまた、(あなたと離れて)ひとり寂しく寝るのだろうか。

004 山部赤人
原文
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士のたかねに 雪は降りつつ
(たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ)
現代訳
田子の浦の海岸に出てみると、雪をかぶったまっ白な富士の山が見事に見えるが、その高い峰には、今もしきりに雪がふり続けている。(あぁ、なんと素晴らしい景色なのだろう)

005 猿丸大夫
原文
奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき
(おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき)
現代訳
奥深い山の中で、(一面に散りしいた)紅葉をふみわけて鳴いている鹿の声を聞くときは、この秋の寂しさが、いっそう悲しく感じられることだ。

006 中納言家持
原文
鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
(かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける)
現代訳
かささぎが渡したという天上の橋のように見える宮中の階段であるが、その上に降りた真っ白い霜を見ると、夜も随分と更けたのだなあ。

007 阿倍仲麻呂
原文
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
(あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも)
現代訳
大空を振り仰いで眺めると、美しい月が出ているが、あの月はきっと故郷である春日の三笠の山に出た月と同じ月だろう。(ああ、本当に恋しいことだなあ)

008 喜撰法師
原文
わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり
(わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり)
現代訳
私の草庵は都の東南にあって、そこで静かにくらしている。しかし世間の人たちは(私が世の中から隠れ)この宇治の山に住んでいるのだと噂しているようだ。

009 小野小町
原文
花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに
(はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに)
現代訳
花の色もすっかり色あせてしまいました。降る長雨をぼんやりと眺めいるうちに。
(わたしの美しさも、その花の色のように、こんなにも褪せてしまいました)

010 蝉丸
原文
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関
(これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき)
現代訳
これがあの有名な、(東国へ)下って行く人も都へ帰る人も、ここで別れてはまたここで会い、知っている人も知らない人も、またここで出会うという逢坂の関なのだなあ。

011 参議篁
原文
わたの原 八十島かけて 漕き出でぬと 人には告げよ あまのつりぶね
(わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね)
現代訳
(篁は)はるか大海原を多くの島々目指して漕ぎ出して行ったと、都にいる親しい人に告げてくれないか、そこの釣舟の漁夫よ。

012 僧正遍昭
原文
天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
(あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ)
現代訳
空吹く風よ、雲の中にあるという(天に通じる)道を吹いて閉じてくれないか。(天に帰っていく)乙女たちの姿を、しばらくここに引き留めておきたいから。

013 陽成院
原文
筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
(つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる)
現代訳
筑波山の峯から流れてくるみなの川も、(最初は小さなせせらぎほどだが)やがては深い淵をつくるように、私の恋もしだいに積もり、今では淵のように深いものとなってしまった。

014 河原左大臣
原文
陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに
(みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに)
現代訳
奥州のしのぶもじずりの乱れ模様のように、私の心も(恋のために)乱れていますが、いったい誰のためにこのように思い乱れているのでしょう。 (きっとあなたの所為に違いありません)

015 光孝天皇
原文
君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ
(きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ)
現代訳
あなたのために春の野に出て若菜を摘んでいましたが、春だというのにちらちらと雪が降ってきて、私の着物の袖にも雪が降りかかっています。 (それでも、あなたのことを思いながら、こうして若菜を摘んでいるのです)

016 中納言行平
原文
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
(たちわかれ いなぱのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ)
現代訳
あなたと別れて(因幡の国へ)行くけれども、稲葉の山の峰に生えている松のように、あなたが待っていると聞いたなら、すぐにも都に帰ってまいりましょう。

017 在原業平朝臣
原文
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
(ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは)
現代訳
(川面に紅葉が流れていますが)神代の時代にさえこんなことは聞いたことがありません。竜田川一面に紅葉が散りしいて、流れる水を鮮やかな紅の色に染めあげるなどということは。

018 藤原敏行朝臣
原文
住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ
(すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ)
現代訳
住の江の岸に打ち寄せる波のように (いつもあなたに会いたいのだが)、 どうして夜の夢の中でさえ、あなたは人目をはばかって会ってはくれないのだろう。

019 伊勢
原文
難波潟 短かき蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
(なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや)
現代訳
難波潟の入り江に茂っている芦の、短い節と節の間のような短い時間でさえお会いしたいのに、それも叶わず、この世を過していけとおっしゃるのでしょうか。

020  良親王
原文
わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
(わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ)
現代訳
あなたにお逢いできなくて) このように思いわびて暮らしていると、今はもう身を捨てたのと同じことです。いっそのこと、あの難波のみおつくしのように、この身を捨ててもお会いしたいと思っています。

021 素性法師
原文
今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
(いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな)
現代訳
「今すぐに行きましょう」とあなたがおっしゃったので、(その言葉を信じて) 九月の長い夜を待っていましたが、とうとう有明の月が出る頃を迎えてしまいました。

022 文屋康秀
原文
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
(ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ)
現代訳
山風が吹きおろしてくると、たちまち秋の草や木が萎れてしまうので、きっと山風のことを「嵐(荒らし)」いうのだろう。

023 大江千里
原文
月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
(つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど)
現代訳
秋の月を眺めてていると、様々と思い起こされ物悲しいことです。秋はわたしひとりだけにやって来たのではないのですが。

024 菅家
原文
このたびは ぬさもとりあへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに
(このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに)
現代訳
今度の旅は急いで発ちましたので、捧げるぬさを用意することも出来ませんでした。しかし、この手向山の美しい紅葉をぬさとして捧げますので、どうかお心のままにお受け取りください。

025 三条右大臣
原文
名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
(なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな)
現代訳
逢う」という名の逢坂山、「さ寝」という名のさねかずらが、その名に違わぬのであれば、逢坂山のさねかずらを手繰り寄せるように、あなたのもとにいく方法を知りたいものです。
ページの上へ