光孝天皇
小倉百人一首 015 |
君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ |
きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ |
光孝天皇 |
読み きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ 現代意訳 あなたのために春の野に出て若菜を摘んでいましたが、春だというのにちらちらと雪が降ってきて、私の着物の袖にも雪が降りかかっています。 (それでも、あなたのことを思いながら、こうして若菜を摘んでいるのです) 季節 春 出典 「古今集」 解説 光孝天皇(こうこうてんのう・天長7年~仁和3年 / 830~887年)は、五十五歳のとき陽成天皇にかわり、第58代天皇として即位されましたが、わずか在位四年で崩御なされました。 仁明天皇の第三皇子で、「仁和の帝」、「小松の帝」とも呼ばれ、幼き頃より学問好きで聡明であったことは『大鏡』にも記されています。 優れた文化人であると共に、和歌や和琴などにもよく通じておられました。 光孝天皇は、即位後も野草を摘みに出かけるように気さくなお人柄でした。 この和歌はその時に詠まれた和歌だと伝えられていますが、まだ皇子だった頃、親しい人に若菜を贈る時に添えた歌だとも言われています。 しかし、いずれにしても情景が素直に詠まれていて、光孝天皇の心の優しさも伝わってくる和歌になっています。 ところで、「若菜」は春に採れる食用や薬用の草のことで、この時期の七草の初芽を食べると万病によいとされていて、今の七草粥の起源になっています。 春の七草は、セリ、ナズナ、ハコベラ、ゴギョウ、ホトケノザ、スズナ、スズシロの七種で、親しい人の健康を祈る和歌にもなっています。 |
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