紀貫之
小倉百人一首 035 |
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける |
ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける |
紀貫之 |
読み ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける 現代意訳 さて、あなたの心は昔のままであるかどうか分かりません。しかし馴染み深いこの里では、花は昔のままの香りで美しく咲きにおっているではありませんか。(きっと、あなたの心も昔のままですよね) ※人はいさ / 「いさ」は「さて、どうでしょうか」という意 ※ふるさと / 「古里」は「故郷」に限られたものではなく、馴染み深いところ 季節 春 出典 「古今集」 解説 紀貫之(きのつらゆき・貞観10年頃~天慶9年頃 / 868?~946年?)は平安時代を代表する優れた歌人で、藤原公任が優れた歌人として挙げた三十六歌仙のひとりでもあります。 凡河内躬恒、 壬生忠岑、 紀友則らと共に、「古今集」二十巻を編纂しましたが、その中の「仮名序」は、紀貫之の歌論としてよく知られています。 延長八年には土佐守となり、土佐から帰京のときに著したものが「土佐日記」です。 ある春のこと、紀貫之が久しぶりに訪れた宿で、主から「ずいぶんと御無沙汰ではありませんか」と問われたとき、この和歌をつくったと伝えられています。 宿の主が男性なのか女性なのかは分かりませんが、人の心の移ろいの様を、「人は」、「ふるさとは」と対比させて、鮮やかに描いています。 また、この宿は、古今集から長谷寺(現在の奈良県桜井市)近くの宿であることが分かりますが、長谷寺は四季折々の花が美しく、多くの人が参拝していたようです。 長い回廊が特徴でもある寺院で、「源氏物語」や「枕草子」にも長谷寺詣でが記されています。 |
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