能因法師
小倉百人一首 069 |
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり |
あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり |
能因法師 |
読み あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり 現代意訳 嵐が吹き散らした三室の山の紅葉の葉が、龍田川に一面に散っているが、まるで錦の織物のように美しいではないか。 ※三室山 / 龍田川とともに、奈良県にある紅葉の名所 ※錦 / 金糸、銀糸などで(模様を)織り上げた布 季節 秋 出典 「後拾遺集」 解説 能因法師 (のういんほうし・永延2年~永承6年? / 988~1051年?) は遠江守忠望の子どもで、藤原長能について歌を学んでいます。 良暹法師とは同時代の人で、三十の歳の頃に出家し、摂津国古曽部に住んだので古曽部入道と呼ばれました。 能因法師のこの和歌は、目の前の風景を詠んだものではなく、宮中での歌合せのときにつくられたと言われています。 しかし、秋の風情がよく伝わってくる和歌で、技法などは用いず、一気に秋の情景を詠み上げていて、山の紅葉が錦となって川を彩る鮮やかさが目に映るようです。 「余情に乏しく、工夫がない」とも評されることもあるようですが、力強い山風に紅葉が吹かれ、それが錦のように川面を覆っていく、その様な豪快で清々しくもある情景が素直に詠まれていて、選者の定家も、その様に捉えたのではないでしょうか。 また、三室山と龍田川は離れているのですが、このふたつは歌枕として広く使われ、三室山・龍田川と聞けば、紅葉を連想するものになっています。 |
◀前の和歌へ 次の和歌へ▶ |