三条院

小倉百人一首 068

心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな

こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな

三条院

読み

こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな

現代意訳


(もはやこの世に望みもないが) 心にもなく、このつらい浮世を生きながらえたなら、さぞかしこの宮中で見た夜の月が恋しく思い出されることであろうなぁ。

季節

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出典

「後拾遺集」

解説
三条院 (さんじょういん・貞元元年~寛仁元年 / 976~1017年) とは後冷泉天皇の第二皇子で、御名は居貞と申され、第六十七代の天皇(三条天皇)であられます。
母は藤原兼家の娘ですが、藤原道長に圧迫されて、在位六年で退位し、翌年出家され三条院となられました。

この和歌は、天皇が退位を決意した時に詠まれたと伝えられています。
三条天皇は、わずか6年程の在位であられましたが、その間も、眼病に悩まされたり、二度も内裏が火事にあうなど、苦難の多い在位であられました。

「恋しかるべき」は、「懐かしく思い出されるだろう」との意味ですが、これからの状況が更によくないことを暗示させていて、歌の響きと共に、天皇の寂しくてつらいお気持ちが伝わってくる歌です。

また、この和歌は内宮妍子に聞かせた歌と言われていて、天皇はこの和歌を詠まれたひと月ほど後に退位されたとも伝えられています。

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